税務調査の現場から(その1)概況聴取


Q. 税務調査の初日、和やかな世間話が本題の始まり? 調査官が社長の「家族」について尋ねる本当の理由。

A. 調査当日。調査官が来訪し、名刺交換と挨拶を交わす和やかな雰囲気のなかで、最初の対話『概況聴取』が始まります。

 これは、いわば「会社の“自己紹介”」の時間。調査官が「あなたの会社は、どんな事業を、どんな人たちで、どうやって行っているのですか?」と、事業内容への理解を深めるための大切なステップです。会社案内のパンフレットや従業員名簿、社内の座席図などを見せながら説明すると、スムーズな意思疎通の助けになります。

 では、なぜ話が社長ご自身の家族や役員の経歴にまで及ぶことがあるのでしょうか?

 それは、「会社と個人の経理が、明確に区分されているか」を確認するという目的があるからです。例えば、ご家族が役員として業務に携わっている場合、その役割と報酬が適切であるか、といった事実関係を整理するために質問されることがあります。

 ですから、最初の何気ない会話も、調査全体の円滑な進行に繋がる大切なコミュニケーションの一部です。会社の業務に関連する範囲で、ご自身やご家族、役員の状況についてきちんと説明できるよう準備しておくことが、お互いの理解を深め、信頼関係を築く第一歩となるでしょう。