Q. 調査官の“懐事情”と“出世の壁”。税務職員を動かすのは「ノルマ」ではなく「正義感」である、本当の理由。
A. 前回のコラムで、税務調査の「ノルマ」は“都市伝説”のようなものだとお話ししました。すると、多くの方がこう疑問に思うでしょう。「では、調査官は何をモチベーションに仕事をしているのか?」と。その答えは、彼らを取り巻く公務員ならではの人事制度に隠されています。
理由1:出世は順番待ちという“壁”
まず、大前提として、役職ごとの人数は国の予算で厳格に決められています(級別定数)。つまり、どんなに調査で手柄を立てても、上のポストに空きがなければ出世できないという“壁”が存在します。民間企業のように、成果に応じてポストを増やすことはできないのです。
理由2:勤続年数という“ハードル”
次に、昇任には「その役職を何年経験したか」という最低限の“勤続年数”が法律で定められています。どんなにその年に素晴らしい成績を上げても、この年数というハードルを飛び越えて、いきなり昇進することはできません。
理由3:評価は調査成績だけではない
そして、個人の評価は、調査成績だけで決まるわけではありません。もちろん調査成績も評価の一部ですが、それはごく一部。後輩の指導力や部署内での協調性など、調査以外の部分も含めた総合的な能力が問われます。
このように、人事制度の仕組みから見ても、調査官は「成果が直接報酬に結びつくインセンティブ」で動いているわけではないことが分かります。では、彼らを突き動かすものは何か。 多くの税務職員と接してきた経験から言えるのは、それはやはり、一人ひとりが持つ「ルールに則って、公平な税務を実現する」という“正義感”なのだと思います。
