現金勘定を手放すと経理が楽になる

 毎月、レシートや通帳を見ながら現金出納帳をつけている。あるいは、経理担当者がノートに手書きで記録し、それを会計事務所に届けている――そんな経理の流れが、今もそのまま続いていないでしょうか。

 その作業、一度立ち止まって考えてみると、実はほとんど意味をなしていないケースが少なくありません。本記事では、「現金勘定」や「現金出納帳」の使い方を見直すことで、経理業務がどれだけ効率化できるかをご説明します。

現金出納帳が「必要な商売」と「そうでない商売」

 まず大前提として、ここでお伝えするのは、レジを日常的に使う小売業や飲食店など、現金を頻繁に扱う商売の話ではありません。

 そのような業種では、毎日多くの現金が行き来するため、現金出納帳による管理は欠かせません。しかしそれ以外の業種、たとえばサービス業・コンサルティング・士業・小規模なBtoB企業などではどうでしょうか。

 個人事業主から従業員5人程度の企業であれば、次のような状況が一般的ではないでしょうか。

  • 手元に事業用の現金をほとんど置いていない
  • 現金での入金は毎日はなく、あっても月に1〜2度程度
  • 経費の支払いはカードか銀行振込がほとんど
  • 現金で直接支払う場面はほぼない

 このような状況であれば、現金の出入りはきわめて少なく、現金出納帳を作成することは大変非効率です。そもそも現金出納帳は、現金が高い頻度で出入りする商売において、現金を正確に管理するために作るものです。それ以外の商売では、作る意味はほとんどないと言えます。

 そして、現金出納帳はそのまま「現金勘定」とも置き換えられますので、現金の動きが少ない商売であれば、現金勘定そのものも不要ということになります。

では、現金勘定を使わないときはどうする?

 現金を使わないとしても、社長や事業主が自分のお財布から消耗品を買ったり、経費を立て替えたりすることはあります。その場合、勘定科目をどう処理すればよいのでしょうか。

 答えは、「事業主借(かし)・事業主貸(かり)」(個人事業主向けの勘定科目)または「役員借入金」(法人向けの勘定科目)の活用です。

〔個人事業主の場合〕 事業主が消耗品110円を自分のお金で購入したとき、「現金」の代わりに「事業主借」を使います。これは「事業主が事業にお金を貸した」というイメージです。

・(借方)消耗品 110 / (貸方)事業主借 110

〔法人の場合〕 社長(役員)が会社の経費を立て替えたとき、「現金」の代わりに「役員借入金」を使います。これは「役員が会社にお金を貸した」というイメージです。

・(借方)消耗品 110 / (貸方)役員借入金 110

 いずれも、いわゆる「立替払い」ですので、あとで事業用の預金口座などから精算(返済)すれば処理は完了します。

 また、個人事業主の方で、現金勘定・A銀行勘定・B銀行勘定……と複数口座の間の預け入れや引き出しをひとつひとつ記帳している方は、それらをすべて「事業主(店主)勘定」にまとめてしまうと、記帳が随分と楽になります。

「なぜ現金出納帳を作っているのか」を問い直す

 ここで一度、根本的な問いに戻ってみましょう。「なぜ現金出納帳を作っているのか」。その答えは何でしょうか。

 もしかすると、会計事務所への連絡手段として、現金出納帳のようなものを作っていませんか?

 たとえばこんな流れです。経理担当者がレシートや通帳を見ながらノートに転記する → そのノートをコピーして会計事務所に届ける(あるいは会計事務所が取りに来る)→ 会計事務所の担当者がコピーを見ながら手入力でパソコンに打ち込む。

 この一連の作業、「時間とお金の無駄」と感じませんか。同じ情報を何度も手作業で転記・入力するこのやり方は、今の時代にはそぐわない非効率な手順です。

 クラウド会計ソフトや銀行との自動連携などを活用すれば、こうした二重三重の手間を大幅に省くことができます。経理の仕組みを見直すことで、経理担当者の負担が減るだけでなく、ミスのリスクも低下し、より正確な数字をリアルタイムで把握できるようになります。

まとめ:経理業務はもっとシンプルにできる

 現金の動きがほとんどない商売で現金出納帳をつけ、現金勘定を使い続けることは、必ずしも正確な経理につながりません。むしろ、不要な手間と転記ミスのリスクを生み出している可能性があります。

 「事業主借(貸)」や「役員借入金」を活用し、現金勘定をなくすだけで、日々の記帳は驚くほどシンプルになります。現在の経理フローを少し見直すだけで、業務の効率は大きく変わります。

 もし「自分のところではどうすればいいかわからない」と感じたら、まずは顧問税理士に相談してみてください。経理の仕組みについても気軽に話を聞いてもらえるはずです。

 一方で、こうした話をしても「うちはこのやり方でいい」と変化を嫌がるようであれば、顧問の見直しを検討することも一つの選択肢です。経理の効率化や業務改善に積極的に関わってくれる税理士と組むことが、会社の成長にとっても大切なことです。

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