税務調査と聞くと、事前に日程の連絡があり、税理士と一緒に準備を整えてから臨むもの——そういったイメージをお持ちの方が多いかもしれません。実際、大半の調査はそのように進みます。ところが、なかには事前の連絡なしに調査官が訪問してくる「無予告調査」と呼ばれるケースも存在します。
この記事では、無予告調査がどのような場面で行われるのか、そして実際に調査官が突然訪ねてきた場合にどう対応すればよいのかを、順を追って整理していきます。
無予告調査とは何か——どんな会社が対象になりやすいのか
「アポなしの調査」というと、国税局査察部(通称マルサ)による強制捜査をイメージする方もいるかもしれません。しかし強制捜査は、脱税の疑いが非常に強い場合に裁判所の許可を得て行われる極めてレアなケースです。今回取り上げるのは、あくまでも「任意調査」の枠内で行われる無予告調査の話です。
通常、国税局や税務署による調査は、国税通則法の規定に基づいて、事前にアポイントを取ったうえで実施されます。ただし、税務署等が「合理的な理由がある」と判断した場合に限り、例外的に無予告での調査が認められています。
この無予告調査を担当するのは、税務署では特別調査班(通称トクチョウ)、国税局では課税部資料調査課(通称リョウチョウ)や調査部特別調査担当部門といった、調査専門の部門です。
では、どのような事業者が無予告調査を受けやすいのでしょうか。代表的なのは、不特定多数の方と現金で取引を行う業種です。具体的には、理美容業、飲食業、パチンコ店、風俗業などが挙げられます。現金取引は帳簿との突合が難しく、事前に連絡すると証拠が隠滅されるリスクがあると判断されることがあるためです。
一方、現金商売以外でも、無予告調査の対象となり得るケースがあります。過去の調査で多額の不正計算が発覚した事業者、精度の高いタレコミ情報がある事業者、あるいは税務署からの連絡を繰り返し無視している事業者などが、その例として挙げられます。
突然、調査官が来た——その時の落ち着いた対応手順
では、実際に税務署や国税局の職員がアポなしで訪問してきた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。重要なのは、慌てず、冷静に、順序立てて対応することです。
① 来訪者の身分と目的を確認する
まずは玄関や受付で相手の室内への侵入を阻止し、相手の身分証明書をしっかり確認したうえで、訪問の目的を明確に聞いてください。最近は悪質な訪問販売業者や犯罪グループによるリスクも高まっているため、少しでも不審に感じたら、最寄りの税務署に電話して訪問者の身分を直接確認することをお勧めします。
② 国税職員と確認できるまで、社内には入れない
身分が確認できるまでは、事務所や店舗の内部に立ち入らせる必要はありません。「確認が取れるまでお待ちください」と伝え、外や玄関先で待たせることは、法的に問題のない正当な対応です。
③ 国税職員と確認できたら、税理士が来るまで待ってもらう
身分が確認できた後も、すぐに応じる必要はありません。「顧問税理士と連絡が取れるまで、お待ちいただけますか」と伝え、事務所や店舗への立ち入りはいったん断ったうえで、応接室や受付などで待機してもらいましょう。調査官もその場で無理やり立ち入ることはできません。
④ 顧問税理士に連絡し、以降の対応は税理士に委ねる
顧問税理士と連絡がついたら、調査官との交渉や対応はそこから税理士に引き継いでもらうことが基本です。調査官から何かを聞かれても、「税理士が来るまでお答えできません」と落ち着いて伝えて問題ありません。
まとめ
無予告調査は、現金商売の業種や、過去に問題があった事業者、タレコミ情報がある事業者などに行われる可能性があります。突然の訪問という状況に動揺するのは自然なことですが、対応の基本は「身分確認→社内に入れない→税理士へ連絡」というシンプルな流れを守ることです。
税務調査において、顧問税理士の存在は非常に重要な役割を担います。「顧問税理士が頼りない」と感じましたら、税務調査に強い税理士との契約を検討してください。いざという時に頼れる税理士がいるかどうかで、対応の質は大きく変わります。
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