結論:「できる」、ただし条件がある
「税理士への報酬を抑えて、自分で税務調査を乗り切りたい」——そう考えている経営者の方は、少なくないと思います。生成AIの急速な普及とともに、「AIを使えば税理士の代わりになるのでは?」という期待の声も、よく耳にするようになりました。
結論から申し上げます。生成AIを活用した税務調査対策は、条件が整えば、有効に機能します。しかしその条件とは、調査官と同じ視点で自社の決算書を読み解く力と、AIが引き起こす「ハルシネーション」を見抜くための税法の知識です。その両方が揃わなければ、生成AIはむしろリスクの温床になりかねません。
なお、このコラムは生成AIの利用を推奨するものではありません。生成AIを税務調査対策として利用する場合は、「個人や法人が特定される情報は絶対に入力しないこと」を念頭に置いて、原則としてセキュリティ対策が施された法人契約のアカウントで行うこととし、個人契約の場合は「一時チャット」機能を用いるなどセキュリティに配慮した環境において使用者の責任でお使いください。生成AIを利用して不具合が生じても本コラムの執筆者は一切責任を負いません。
なぜ生成AIが税務調査対策に使えるのか
生成AIは、大量の情報を整理して体系的な回答を生成することを得意としています。税務調査の場面では、主に二つの局面で活用できます。
調査前に対話型生成AIで「想定問答集」を作る
調査前の準備として最も重要なのは、調査官がどのような質問をしてくるかを先読みしておくことです。生成AIに対して、業種・売上高・粗利率・申告所得額・消費税納税額といった財務データを盛り込んだプロンプトを入力すると、「調査官がしてくるであろう質問とその模範回答例」を出力させることができます。
プロンプトの構成例としては、会社の業種や過去五年間の売上高・粗利率・申告所得額の推移などを「会社の状況」として整理したうえで、「調査官がしそうな質問20件」「質問の意図」「適切な回答例」「準備すべき資料」を出力するよう指示する形が効果的です。
ただし、ここで重要になるのが「自分が調査官ならばどこを見るか?」という視点です。売上の急変・粗利率のブレ・特定の経費科目の動き——こうした「調査官が着目するポイント」を自分で絞り込まなければ、AIは的外れな質問を量産するだけになってしまいます。意味のないデータを無差別に入力しても、使いものにならない想定問答集しか生まれません。
調査中はソース指定型AIで根拠を固める
調査官から修正事項の指摘を受けた場合、その内容をテキストやPDFに書き起こし、関連する税法・通達・判例集・その他参考文献などと合わせてソース指定型AI(Googleの「NotebookLM」等)に取り込みます。そのうえで疑問点や対応策を出力させると、調査官との交渉をスムーズに進める材料が得られます。指摘の内容が誤りである場合には、反論の根拠を出力するよう指示することもできます。
NotebookLMは指定したソース文書のみを参照して回答を生成するため、根拠の薄い情報が混入しにくい設計になっています。ただし、ハルシネーションのリスクが完全になくなるわけではありません。取り込むソース文書を間違ってしまうと誤った結論に導かれてしまうことになります。
必ず押さえておくべき二つの注意点
生成AIを税務調査対策に活用する際、特に注意が必要な点が二つあります。
① 「調査のポイント」を絞り込む目利き力
繰り返しになりますが、「自分が調査官ならばどこを見るか?」という視点は、生成AIを有効に使うための大前提です。自社の決算書を冷静に俯瞰し、調査官が気にしそうな箇所を自分で特定してからプロンプトを組む——この工程を省いてしまうと、AIへの投資が無駄になります。この目利き力は、AIが代わりに補ってくれるものではありません。
② ハルシネーション対策は全フェーズで行う
生成AIは、もっともらしく見えても誤った情報を出力することがあります。これがハルシネーションです。調査前の想定問答集に誤りがあれば初動でつまずきますし、調査中の対応策にハルシネーションが紛れ込めば、調査官との話が噛み合わなくなります。
AIが出力した内容は、必ずソースを確認し、できる限り法令の条文や国税庁の通達原文など一次情報までさかのぼって、自分自身が納得するまで読み込む習慣が欠かせません。このプロセスを省略すると、生成AIは頼もしい味方ではなくリスクの引き金になります。
正しい選択は何か
生成AIは確かに強力なツールです。しかし、「税務調査で何が問題になりうるか」を判断する税法の知識と、調査官の思考回路を理解する経験がなければ、AIをうまく使いこなすことはできません。「入力するだけで税務調査を乗り切れる」というのは、残念ながら現時点では現実的ではなく、むしろAIを正しく使うためにこそ、相応の専門知識が求められます。
「自分が調査官ならばどこを見るか?」という視点が持てない、あるいはハルシネーションを見抜く税法の知識に不安がある——そのような場合には、税務調査対策を得意とする税理士に依頼することが、結果的にリスクを最小化する最善策です。生成AIは、正しく使える人の手に渡って、初めて本来の力を発揮するものです。
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