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ネットで見かけた税務の誤り6つを正します

 税務調査や税務署について気になることがあると、まずインターネットで検索したり、AIアシスタントに質問したりします。

 手軽に情報を得られる時代になった一方で、税務については不正確な情報が少なくありません。しかも発信元が、そこそこ有名な税理士法人や税理士検索サイトであることもある。一見すると信頼できそうに見えるのが厄介です。

 ネット上で実際に見かけた6つの誤りを取り上げます。

⒈「国税局資料調査課の調査には日数制限がなく、解明されるまで終わらない」

 事実と異なります。国税局であれ税務署であれ、限られた人員と日数の中で計画的に調査を進めています。解明されるまで青天井で続けるということは、現実にはあり得ません。

 あわせて「税務署の調査と比べて、資料調査課の調査は終了までに長い時間がかかる」とする記事も見かけます。これも正確ではない。調査にかかる期間は案件の内容で決まるもので、所属組織によって一律に決まるわけではありません。

⒉「資料調査課の調査は裁判を想定して、必ず『質問応答記録書』を作成する」

 事実と異なります。裁判を見据えて調査するのは国税組織全体に共通する方針であり、資料調査課だけの特徴ではありません。

 「質問応答記録書」は、事実関係を補完する目的で作成するものです。事実関係がすでに明らかな場合や、他に十分な証拠書類がある場合には作成しないこともあります。物理的に作成が難しい状況では、調査官が納税者とのやり取りを記録した「調査官報告書」で代用されることもあります。

 「資料調査課だけが特別な調査手法を持っている」かのような書き方は、誤解を招きます。

⒊「国税局は資本金1億円以上の大企業や富裕層の個人だけを調査する」

 事実と異なります。国税局の資料調査課(通称リョウチョウ)が調査対象とするのは、原則として資本金1億円未満の法人です。資本金1億円以上の法人を担当するのは、同じ国税局でも調査部という別の部署です。富裕層の個人への調査は、税務署でも実施しています。

 この誤情報を信じてしまうと、「うちは資本金1,000万円だから国税局が来ることはない」といった油断につながりかねません。規模にかかわらず、適切な申告と対策を意識しておいてください。

⒋「修正申告に応じない場合は、国税不服審判所が裁決を行う」

 事実と異なります。納税者が指摘に対して修正申告に応じない場合、税務署が更正決定処分を行います。

 国税不服審判所は税務署とはまったく別の組織であり、調査の結果に基づいて直接何かを決定する立場にはありません。関わるのは、納税者が処分を受けた後に不服を申し立てた場合です。元の記事は説明が不足しており、読み方によっては「応じなければ即座に不利な裁決が下される」と受け取られかねない表現でした。

⒌「税務署員にもノルマがあり、少しでも多く追徴課税をしようとする」

 事実と異なります。税務署員が所属する国税庁では、採用区分ごとに人事評価制度に基づいた昇格・昇任が行われています。調査の成績は評価項目の一部にすぎず、それだけで出世が決まる仕組みにはなっていません。

 「ノルマ達成のために無理な指摘をする」というのは、都市伝説の類です。この点は「税務調査にノルマはあるのか」から3本のコラムで詳しく書きました。調査で見解の相違が生じることはありますが、それは制度上の論点であって、ノルマのための追徴とは本質的に違います。

⒍「国税専門官(キャリア)と税務職員(ノンキャリア)で職務が異なる」

 そもそも前提から誤っています。国税組織で「キャリア」と呼ばれるのは、国家公務員採用総合職試験に合格して採用された職員です。国税専門官採用試験で採用された職員は、キャリアではありません。

 キャリア職員は、採用から係長職になるまでの間に現場を経験した後、本庁等での企画・管理業務に移ります。つまり、日々の税務調査の現場にいるのは、基本的にすべてノンキャリアの職員です。

 同じ記事には「国税専門官は税務署で仕事をすることが少ない」「税務職員は選抜試験を経て国税調査官になれる」といった記述もありました。税務署での勤務経験があれば、すぐに誤りだと分かる内容です。

まとめ:大切な判断を、不確かな情報に委ねないために

 インターネット上の税務情報は、記事の転載や生成AIによる自動作成などにより、出典も正確性も不明なまま拡散されているのが現状です。

 中には、国税組織での実務経験がない方が書いたと思われる記事や、経験があっても十分な知識に基づいていないと思われる記事が、税理士や税理士法人の公式サイトに載っていることもあります。同じ資格を持つ者として、残念に感じています。

 税務は、大切な財産に直結するテーマです。顧問税理士がいるなら、気になることはまず税理士に確認する習慣をつけてください。相談先がまだない方は、信頼できる税理士を見つけておく。正しい情報と専門家の支えが、最も確実な税務対策になります。

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