電話申込

顧問税理士に何を頼めばいいか分からない方へ

 顧問税理士との関係が、なんだかしっくりこない。

 毎月あるいは数か月に一度、帳簿や申告書の作成をお願いして、書類を受け取って、それでおしまい。特に不満があるわけではないけれど、「顧問料を払っている意味は何だろう」とふと思う。そういう経営者は少なくありません。

このコラムは自戒を込めて書いています

 このコラムは、税理士である私自身への自戒を込めて書いています。

 「経営者が税理士をもっと活用すべきだ」と偉そうに言うつもりはありません。むしろ、「経営者が気軽に相談できる環境を、自分はちゃんと作れているか」「お客様が遠慮しなくて済む関係を築けているか」と、自分に問いかけながら書いています。

 他の税理士のやり方を批判する意図もありません。税理士にはそれぞれのスタイルや方針があり、お客様との間で築いてきた信頼関係があります。そのうえで、経営者の側からもう一歩踏み込んでみると、もっと良い関係になれるかもしれない。そういう一つの考え方です。

原因はコミュニケーション不足ではない

 うまくいかない原因として、まず思いつくのは「コミュニケーション不足」です。確かに一因ではあります。しかし、頻繁に顔を合わせれば関係が良くなるかというと、そうとも限りません。

 積極的にいろいろ提案してくれる税理士なら良いのかというと、これも微妙なところです。本業で手一杯なのに「帳簿をもっと完璧にしましょう」「このセミナーに参加しませんか」と次々に言われれば、圧が強すぎて疲れてしまう。そういう声も耳にします。

 原因は、「税理士をどう使えばいいのか分からない」ということに尽きると思っています。

何も頼まないから、何もしてくれない

 使い方が分からないから、何を頼んでいいか分からない。何も頼まれなければ、税理士の側も求められていない仕事には手を出しにくい。すると「うちの顧問税理士は帳簿をつけるだけで、何もしてくれない」という不満が静かに溜まっていきます。

 どちらが悪いという話ではありません。お互いが遠慮し合った結果、生まれてしまう「もったいない関係」です。

 しかし、顧問料はすでに支払われています。帳簿の作成と申告書の提出だけでそれを消化してしまうのは、惜しい話です。

帳簿や申告書は、AIが作れる時代

 帳簿の記帳や申告書の作成は、今やAIやクラウド会計ソフトがかなりのレベルでこなします。一般的な税務の疑問なら、AIに聞けばそれなりの回答が返ってきます。

 帳簿と申告書をつくってもらうためだけに顧問税理士を置いているのだとしたら、その価値は年々薄れていきます。

 AIにできないのは、あなたの会社だけの、固有の事情に踏み込んだ判断と助言です。

あなたの会社の事情は、顧問税理士だけが知っている

 たとえば、こんな問いです。

「来期、設備投資を考えているけれど、今期中にやったほうが有利なのか」
「従業員に決算賞与を出したいが、資金繰りと税負担のバランスはどうか」
「そろそろ法人化を検討しているが、本当に今がベストなタイミングなのか」
「家族に事業を引き継ぎたいが、相続や贈与の面でどう準備すればいいのか」

 正確に答えるには、会社の財務状況、事業の方向性、家族構成、将来の計画といった、極めて個別的な情報が要ります。AIに聞いても「一般的にはこうです」という回答しか返ってきません。そこまで踏み込んだ情報をAIに預けることに抵抗がある方も多いと思います。

 顧問税理士は、あなたの会社の数字を毎月・毎年見ています。事業の流れを知っています。経営者の考え方も理解している。だからこそ、状況に合った具体的で実行可能な助言ができます。

まずは小さなお願いから始める

 いきなり経営相談はハードルが高い。それなら、本当に小さなことから始めてみてください。

 「連絡方法をメールやLINEにしてもらえませんか」。電話はタイミングが合わないことも多いもの。テキストなら、お互いの都合の良い時間に確認できます。

 「データでやりとりしませんか」。領収書の束を持参したり、郵送で書類をやりとりしたりする手間が省けるだけで、ずいぶん楽になります。

 「この数字はどこから出ているのですか」。試算表や決算書を受け取ったとき、気になる項目を一つだけ聞いてみる。数字の羅列で終わらせずに済み、自社の状況が見えやすくなります。

 お願いしたときの反応そのものが、一つの判断材料になります。快く応じてくれる税理士なら、この先もっと深い相談にも応えてくれるはずです。

 見るべきは、断られたときのほうです。同じ「できません」でも、理由を説明してくれるかどうかで意味が違います。事情があって今はできないと言われたのなら、こちらの話は届いています。理由もないまま話が止まるなら、それも一つの答えです。

お願いしても変わらなかったら

 小さなお願いをしても対応してもらえない。デジタルでのやりとりを提案しても「うちはこのやり方なので」と取り合ってもらえない。相談を持ちかけても、あまり親身に聞いてくれない。そういう状況が続くなら、少し立ち止まって考えてみてください。

 時代は変わります。経営者が求めるものも変わる。税理士もまた、変化に対応し続ける必要がある。私自身、強くそう感じています。歩調がどうしても合わないと感じたときは、無理に関係を続けるより、自社の成長段階に合った税理士を探すという選択肢もあります。

 税理士を切り捨てるという話ではありません。お互いにとってより良いかたちを選ぶということです。

顧問税理士には、遠慮なく相談してください

 顧問税理士を、もっと使ってください。

 「こんなこと聞いていいのかな」と思うようなことでも、どんどん相談してみる。税務のことだけでなく、経営判断に迷ったとき、お金の流れに不安を感じたとき、将来の計画を誰かに話してみたいとき。顧問税理士は、経営者にとって最も身近なお金の専門家です。

 帳簿の作成だけを頼んで、あとは黙って年に数回会うだけ。それでは顧問料が惜しい。相談すればするほど、支払っている顧問料の価値は上がっていきます。

 私自身も、このコラムを書きながら気を引き締めています。お客様が「何でも気軽に聞ける」と思ってくださる税理士でありたい。そう考える税理士が一人でも増えれば、経営者と税理士の関係は変わります。

 今度会ったとき、何か一つ相談してみる。そこから始めてください。

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