API連携(会計ソフトと銀行・クレジットカード会社などのシステムを自動でつなぐ仕組み)が広まりました。OCR(書類の文字・数字を画像から自動で読み取る技術)も同じです。会計帳簿の作成は、以前とは比べものにならないほど軽くなりました。「自社でできる部分は自社でやり、税理士には本来の仕事に専念してほしい」と考える会社が増えているのは、自然な流れです。
高い顧問料を払いながら、実態が帳簿作成の代行にとどまっている。もったいない関係です。顧問料の中身については、別のコラム「あなたの顧問料、”サブスク”になっていませんか?」で書きました。
では、実力のある税理士をどう見極めるか。選ぶとき・見直すときに確かめたい点を挙げていきます。
まず、本音で話せるか
どれほど知識が豊富で実績のある税理士でも、依頼者と相性が合わなければ力は出せません。税理士は、会社の財務状況や経営方針を共有し、時には耳の痛いことも伝えながら、長く伴走する相手です。資金繰りの実情や役員報酬の決め方まで、正面から本音で話せるかどうか。ここが最初の関門になります。
ウェブの口コミやオンライン面談だけで決めるのは危うい。初回は実際に会って話すのが確実です。面談では自分の状況や懸念を率直に伝え、それに誠実に、かつ分かりやすく応じてくれるかを見る。聞いたことに答えているか、それとも質問をすり替えているか。相性は、この応答の仕方に出ます。
登録からAIへの向き合い方まで
① 税理士登録の有無
「税理士」の肩書きで業務をしていても、正式な登録がなければ、いわゆる「にせ税理士行為」に該当します。税理士業務は登録した税理士でなければ行えないと定められており、違反には罰則もあります(税理士法第52条)。高齢や体調不良で実質的に業務が難しい税理士の名義を借りて、事務所の職員が業務を回している場合も同じです。担当者が登録された税理士かどうかは、日本税理士会連合会が運営する「税理士情報検索サイト」で確認できます。全国の登録税理士は、令和8年6月末日現在で82,297人。この母数から、一人を選ぶことになります。
名義借りに類する事案は、国税の現場で何度も目にしてきました。税理士は、年齢を重ねても登録そのものが自動的に失われるわけではありません。現実として、80歳を超えて税理士業務を真っ当に全うできる人は限られる。それでも名義が残る限り、事務所は動きます。名義を貸す側も、それに乗って業務を回す側も、依頼者を欺いていることに変わりはありません。
② ソフトに頼らない説明
会計・税務ソフトを使えば仕訳は数クリックで片づきます。ただ、入力結果だけに依存していると、申告内容の誤りを見落とす場合があります。「この計算の根拠となる法令は何ですか」「なぜこの処理になるのですか」。こう聞いたとき、自分の言葉で答えられるかを確かめてください。
③ 改正と新しい取引への追随
税法は毎年改正され、新しいビジネスモデルや取引手法も次々に現れます。この変化に追いつけない税理士は、実務での対応力が徐々に落ちていきます。直近の改正で自社に関係する項目は何か、新しい事業形態の税務上の取扱いはどうなるのか。面談で質問してみてください。
④ クラウドと生成AIへの対応
書類のやり取りが今も郵送やFAX中心なら、費用と時間が静かに積み上がっている可能性があります。クラウドを使ったデータ共有は、業務効率化の出発点です。
また、生成AIから得た情報をもとに質問してくる方も増えており、専門家として正確に答える力が問われています。AIが誤って生成した情報(ハルシネーション)を見抜けるか。狙った答えを引き出す指示の出し方を身に付けているか。AI活用そのものについては、別のコラム「生成AIで税務調査対策はできるか?」「使えるAIに育てる!プロンプト修正術」で書きました。ここまでの四つは、毎月の顧問業務で見えてくる力です。
税務調査が、実力の分かれ目になる
税理士の中核的な役割は、国税当局との交渉を依頼者に代わって行う「税務代理人」としての仕事です。ここで問われるのは、①から④までとは別の力になります。
国税にいた頃、こんな税理士に相対したことがあります。調査の立会いに来て、最初から最後まで一言も発しない。案の定、その方は調査期間中に会社から契約を切られていました。後から聞いたところ、会社はそれまで税理士本人と会ったことがなく、やり取りはすべて事務所の職員としていたそうです。
調査の場は、代理人としての働きが依頼者の目に映る場面でもあります。日頃の関係が職員任せであれば、その数日で露わになります。
⑤ 調査の展開を読む力
「なぜ自社が調査対象に選ばれたのか」「調査官はどこに着眼するのか」「調査はどう展開していくのか」「調査官の上司はどんな方針で指示を出しているのか」。こうした点を的確に読める税理士は、現場で先手を打てます。この推測力は、実際の調査経験と、国税当局の組織・運営への理解から生まれます。
面談では、「これまでに対応された税務調査の経験を教えてください」「調査が始まるとき、どのように準備や方針を立てますか」と具体的に聞いてみてください。誰が立会いに来るのかも、あわせて確認してください。事務所によっては、担当の職員だけが来ることもあります。
税理士については、税務代理権限証書(税理士法第30条の書面)を提出した税理士または税理士法人が、税務代理人にあたります(国税通則法第74条の9第3項第2号)。調査の事前通知は、会社と税務代理人の双方に対して行われます。会社が同意しているときは、税務代理人への通知だけで足りるとされています(同条第1項・第5項)。事務所の職員は、この税務代理人ではありません。証書に誰の名前が入るのかを、面談で確かめてください。
⑥ 代理人としての素養
税務調査の場では、専門知識だけでなく代理人としての素養も問われます。依頼者が属する業界の慣習や取引実態を理解しているか。国税当局の機構と実務上の運営を知っているか。どちらも調査対応の質に直結します。担当税理士が代理人として信頼に足るかどうかは、面談の場で見てください。
まとめ
税理士を選ぶとき・見直すときに効くのは、実際に会って質問を投げ、その税理士の生の声を聞くことです。本音で話せるかどうかも、登録の有無も、調査の経験も、面談で聞けば返ってきます。遠回りに見えて、これが最短です。
帳簿作成が自動化された今、記帳代行の対価として顧問料を払い続ける関係に、合理的な説明はつきません——それを続けるかどうかを決めるのは、税理士ではなく経営者です。
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