個人事業主には、意外と知られていない取扱いがあります。接待交際費を経費にするときの上限金額がない、という点です。
法人には「資本金に応じて年間800万円まで」「飲食費の50%まで」といった制限がかかります。個人事業主にこれはありません。交際費に枠を設けている租税特別措置法61条の4は法人税の規定で、所得税に同じものが置かれていないからです。事業に関係のある支出であれば、金額にかかわらず原則として全額が経費になります。
ただし、上限がないことと、何でも経費になることは違います。枠がないぶん、見られるのは中身のほうです。
⒈経費にできるのは「事業の売上に貢献する相手」だけ
交際費と認められるのは、事業に関係する相手への支出に限られます。取引先、仕入先、顧客、外注先。ここまでが範囲です。家族、友人、事業に関係のない知人への支出は含まれません。
税務署が見ているのは、その飲み会や贈答が将来の売上にどう繋がるのか、という筋道です。家族旅行を経費にする。友人と飲んだ代金を交際費に入れる。こうした処理は私的流用とみなされます。
1人でのカフェ利用はどうか。仕事をする場としてカフェを使うことはあるでしょう。ただし1人での飲食は、原則として交際費になりません。自分を接待することはあり得ないからです。場所代としての「会議費」や「雑費」で処理することになりますが、単なるランチや休憩とみなされやすいため、頻度と金額には注意が要ります。
⒉「領収書だけ」では不十分?必須の5つのメモ
「領収書があるから経費になる」は、危険な誤解です。
調査の場で、調査官は領収書を見ながら「これは誰と行ったんですか」「どんな話をしたんですか」と質問します。数年前の飲み会の詳細を、記憶だけで答えるのはまず無理です。
そこで、領収書の裏面か会計ソフトの摘要欄に、いつ・どこで・誰と・何人で・何のために、の5つを記録してください。とりわけ「誰と」が効きます。「◯◯社 佐藤様 他2名」まで書いてあれば、聞かれたその場で答えられます。記録の残し方は、別のコラム「経営者自身が知っておくべき「経費のストーリー」」で詳しく書きました。
⒊「1万円基準」と会議費の使い分け
令和6年度の税制改正で、交際費から除外できる飲食費の基準が、1人あたり5,000円から1万円に引き上げられました。主に法人税の話ですが、個人事業主にとっても無関係ではありません。
個人事業主はもともと全額を経費にできるので、1人1万円を超えても交際費として全額が経費になります。ただ、1万円以下の飲食は「会議費」、1万円超は「交際費」と分けておくと、後から中身をつかみやすくなります。税額を変えるための区分ではなく、自分の経費構造を見るための区分です。
⒋税務署は「頻度」と「バランス」を見ている
事業に関係があると言っても、不自然な支出は調査の的になります。
毎週のように同じ相手と高額な飲み会をしていれば、個人的な関係を疑われます。売上規模に対して高すぎる場合も同じです。年商500万円で交際費が200万円あれば、生活費が混ざっているのではないかと見られます。
不自然な支出には、反面調査もついてきます。疑わしいと判断されれば、相手方の会社や飲食店に「本当にその会食があったか」を確認しに行きます。ここまで来ると、迷惑がかかるのは自分だけではありません。
まとめ
交際費は、関係を作って次の仕事につなげるための支出です。節税のために使うのではなく、売上を作るために使った結果として経費になる。順序が逆になると、途端に危うくなります。
「この出費は交際費に入れていいのか」「金額が大きくなってきたが大丈夫か」。そう感じたときは、自己判断せずに税理士へご相談ください。
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