現場・現物確認調査で会社の物理的な姿を把握した調査官は、いよいよ核心である「帳簿・質問調査」へ進みます。会社が作成した会計帳簿と、添付された証拠書類を一つひとつ確認し、分析していく作業です。
調査官がどんな視点で帳簿や書類を見ているのかを知っておけば、当日の対応は変わります。
「帳簿調査」と「質問調査」
税務調査で最も多くの時間が割かれるのが帳簿調査です。調査官は、総勘定元帳や仕訳帳といった会計帳簿と、領収書、請求書、契約書などの証拠書類を突き合わせ、日々の取引が正しく記帳され、適正な申告が行われているかを確認していきます。
売上の計上漏れはないか。架空の経費が含まれていないか。個人的な支出が会社の経費として処理されていないか。数字の羅列を眺めるだけでなく、取引の不自然な点や、例年と異なる大きな金額の変動に注目する傾向があります。
帳簿調査と並行して行われるのが質問調査です。帳簿の数字について、社長や役員、経理担当者へ具体的な質問が飛びます。
最初から会社を疑って問い詰めているわけではありません。帳簿や書類だけでは読み取れない取引の背景、ビジネスモデル、社内の経理ルールを正確につかむための事実確認です。
「この高額な交際費は、どのような目的で、どのお客様との会食に使われたものですか」「新規の取引先であるA社とは、どんな経緯で取引が始まったのでしょうか」。こうした質問を通じて数字の裏側にある事実を明らかにし、税務上の処理が妥当かを判断していきます。ここで問われるのは、憶測で答えたり不確かなことを取り繕ったりせず、事実に基づいて誠実に回答することです。
営業日報や作業報告書にも及ぶ
調査官の視点は、会計ソフトのデータやファイルに綴じられた領収書だけにとどまりません。
帳簿上の数字と現場の活動が一致しているかを多角的に確かめるため、経理以外の書類、たとえば営業担当者の日報や現場の作業報告書の提示を求めることがあります。
会社の活動はすべて連動しています。営業部が受注し、製造部や現場が作業を行い、その結果として売上が立ち、経理部が記帳する。調査官は、この一連の流れに矛盾がないかを注意深く見ています。
「帳簿に記載された外注費が、現場の作業報告書に記録された実際の作業量と見合っているか」「売上の計上タイミングが、営業日報に書かれた成約日とズレていないか」。こうした確認のために、経理以外の帳簿を見たり、経理担当者以外の従業員に質問したりします。
ここでよく指摘されるのが「期ズレ(売上や経費を、本来計上すべき事業年度とは別の年度で計上してしまう誤り)」です。営業担当者が目標達成のために売上計上の時期をずらしていた。現場からの報告遅れで経費の計上が翌期にまたがった。中小企業でも珍しくありません。
社内の情報共有が不足していると、経理担当者が気づかないうちに税務上のリスクを抱え込むことになります。日頃から営業や現場と経理部門の連携を密にし、会社全体のお金の動きと書類の記録が一致する体制を整えておいてください。
まとめ
税務調査は、恐れるものではありません。日頃から適正な会計処理を行い、事実関係を証明できる資料を整理しておけば、堂々と対応できます。
質問されそうな点を予測し、関連資料をあらかじめ整理しておく。この準備が、事実に基づいた対話を可能にします。
自社の現状を見つめ直し、書類管理や社内の報告体制を点検する。調査の連絡が入る前に、一度手をつけておく価値があります。
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