税務調査を担当するのは、多くの場合、会社を管轄する地元の「税務署(国税庁の下部組織で、直接納税者と接する最前線の行政機関)」です。しかし会社の規模や状況によっては、上位組織である「国税局(各地域の税務署を管轄・指導し、より大規模な事案を扱う行政機関)」が直接乗り出してくることがあります。
国税局の調査は、大きく3種類。いずれも税務署の調査より難度が高く、より緻密な準備と万全の体制が求められます。
税務署側にどのような肩書の調査官がいるかは、別のコラム「税務調査は誰が来るかで狙いが分かります」で書きました。
大規模法人と、税務署の「助っ人」として動くプロ集団
一つ目は、会社の規模を基準としたものです。原則として、資本金1億円以上の会社は国税局調査部の調査部門が担当します。これだけの規模になると取引形態が複雑になり、海外展開や高度な金融取引も絡んできます。税務署ではなく、国税局の専門部署が直接担当する仕組みです。
二つ目は、資本金1億円未満の中小企業です。本来は地元の税務署が担当する規模でも、近年急成長を遂げていたり、何らかの情報から大きな申告漏れが疑われたりすると、状況は一変します。
このとき動くのが、国税局の「資料調査課(通称リョウチョウ:高度な情報収集能力と調査手法を持つ国税局内の専門部署)」です。税務署の「助っ人」として合同調査(税務署の調査官と国税局の担当者が共同で行う調査)を行います。複雑な資金の流れを解明したり、隠された事実を掘り起こしたりする能力に長けたプロ集団です。実務では、リョウチョウの調査は税務調査の最高峰とも呼ばれます。対象になった場合は、極めて厳格な視点で帳簿と取引実態が精査されると考えてください。
強制調査「マルサ」
三つ目が、ドラマや映画で耳にする「査察調査」です。通称マルサ。国税局の査察部門に所属する査察官だけで構成される特別な組織が実行します。
調査部や資料調査課の調査は、あくまで納税者の同意に基づく任意調査(法的な強制力はないものの、正当な理由なく質問や検査を拒否できない調査)の枠内です。しかしマルサの査察調査は、性質が根本から違います。
査察調査は、裁判官の許可状を手に、強制的な捜索や差し押さえ(証拠となる書類やデータなどを公権力によって強制的に確保すること)を行います。目的は、経理上のミスを正すことではありません。意図的で悪質な脱税を暴き、刑事責任を問うために検察へ告発することです。
この調査が及ぶということは、国税局側がすでに相当な証拠を内偵調査(対象者に気付かれないよう秘密裏に情報収集を行うこと)でつかんでいる状況を意味します。
まとめ
国税局が動く事案は、規模の大きさ、取引の複雑さ、不正の疑いの強さのいずれかで、通常の税務署の調査とは一線を画します。対象になった場合は、緻密な準備と万全の体制で臨む必要があります。
備えは、日頃から透明性の高い経理体制を作り、適正な申告を続けることに尽きます。事業が成長し、取引が複雑になるほど、税務リスクも高まる。正しいルールの下で税負担を管理していく姿勢が、そのまま守りになります。
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